司法判断は利息制限法原則適用を堅守し、その傾向はますます強まり特に平成16年2月の最高裁判例でその潮流は確定的になったと思われる。
現在の状況においては貸金業者側が法43条の適用を主張しても認められる可能性はほとんどないと断言してもよいであろう。
この事実は司法側からの高金利に対する消費者保護の強い意思が判例というかたちで規範化されたと評価することもできる。
これら高金利に対する消費者保護の見地からの流れは、平成17年にも引き継がれ、最高裁判所は次のような重要判例を出し、いわゆる「みなし弁済」規定の適用に事実上終止符が打たれた。
時系列的には次のようになる。
①は、リボルビング方式の貸付けについての判断であり、②は、期限の利益喪失約款と支払いの任意性についての判断と③受取証書の法定記載事項の一部を契約番号等で代替することができるかが争われたもので、④は、支払いの任意性に関する判断であるが、期限の利益喪失約款の存在以外の要素も判断の対象としている。
⑤は支払いの任意性のほかに、日賦貸金業者の特例に関する要件の判断で、すべてにおいて法43条の適用を否認している。
以下簡単に紹介する。
① リボルビング払いの貸付けと法43条の適用の有無の問題である。
リボルビイング・ローン(revolvingloan)とは、一定与信枠の範囲内で自由に反復借入れができ、基本契約に基づく全貸付けの残元利金について返済期日に最低返済額および経過利息を支払えばよいとするローン形態である。
したがって、個々の貸付けについての「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」は定められないし、残元利金についての返済期間、返済金額等は、債務者が、今後追加借入れするかどうか、毎月の返済期日にいくら返済するかによって変動するから、返済期間、返済金額等を確定することは不可能である。
このような契約形態を前提として、法43条の適用要件とされる、17条書面とは記載不可能な、法17条1項6号に掲げる「返済期間及び返済回数」、施行規則13条1項1号チに掲げる各回の「返済金額」を除いた法17条1項所定のその余の事項を記載した書面を交付していれば、17条書面を交付したことになるとして争われた事例である。
これについて最高裁判所は、「貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を目的として、貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨、目的等にかんがみると、法43条1項の規定の適用要件については、これを厳格に解釈すべきもの」という判断を踏襲し、したがって「17条書面として交付された書面に法17条1項所定の事項のうちで記載されていない事項があるときは、法43条1項の適用要件を欠くというべきである」としてみなし弁済の適用を否認した。
また、リボルピンク払いと法17条書面との関係については、「確定的な返済期間、返済金額等を17条書面に記載することが不可能な場合でも、個々の貸付けの時点での残元利金について、最低返済額及び経過利息を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間、返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから、貸金業者は、これを確定的な返済期間、返済金額等に準ずるものとして17条書面として交付する書面に記載する義務があった」としている。
② 期限の利益喪失条項の存在と支払いの任意性に関する問題である。
補足意見の中で「期限の利益喪失条項のある取引においては、その約定に服さなければならないとしたら、その約定に基づく支払いは任意の支払いということはできない」と指摘していたが、この問題を正面から取り上げた判断である。
判決は、貸金業法43条適用の要件である支払の任意性につき「事実上強制を受けて支払をした場合は自由な意思によって支払ったとは言えず、期限の利益喪失特約は制限超過部分につき無効だが、債務者に有効であるとの誤解を与え支払を事実上強制することになるから、特段の事情にない限り任意に支払ったとはいえない」と判示して、期限の利益喪失特約のある取引につき、みなし弁済の適用を否定した。同判決は、法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは、債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識したうえ、自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい、債務者において、その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないことを前提として、「期限の利益喪失特約がその文言どおりの効力を有するとすると、債務者に対して、期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため、本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから、同項の趣旨に反し容認することができず、期限の利益喪失特約のうち、債務者が支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に、期限の利益を喪失するとする部分は、同項の趣旨に反して無効」であるとし「期限の利益喪失特約は、法律上は一部無効であって、制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないが、この特約の存在は、通常、債務者に対し、支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、その結果、このような不利益を回避するために、制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになる」・「したがって、期限の利益喪失特約の下で、このような誤解を生じなかったといえるような特段の事情がない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない」としている。
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③ ②と同一の判決の中での判断で、受取証書の交付を規定する法18条1項は「貸金業者は、貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは、その都度、直ちに、内閣府令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を記載した書面を当該弁済をした者に交付しなければならない」とし、1号から5号まで列記し、同条同項6号によって「前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項」の規定をおき、これを受けて貸金業法施行規則15条は1項において記載事項を定めているが、同条2項において、「貸金業者は、法第18条1項の規定により交付すべき書面を作成するときは、当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって、同項第1号から第3号まで並びに前項第2号及び第3号に掲げる事項の記載に代えることができる」と規定している。
この規定によれば法18条1項の書面に契約番号等を記載すれば、貸金業者の商号、契約年月日等の記載に代えることができるということになる。
そこで契約番号等を記載すれば、契約年月日等を記載しなくとも18条書面として有効良を保てるか否かが問題となった。
最高裁判所は、ここでも法43条1頃の適用要件につき厳格に解釈すべしという考えを踏襲し、貸金業法18条1項6号にいう「内閣府令で定める事項」とは、18条1項1号から5号に掲げる事項に追加して定める事項であることを規定するとともに、18条書面の交付方法の定めについて内閣府令に委任することを規定したもので、内閣府令により他の事項の記載をもって法定事項の記載に代えることは許されないと判示して、この規定を法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効とした。
④ 支払の任意性の判断基準の問題である。
この判決は、期限の利益喪失特約と支払いの任意性については、前記判例と同一の理由で同一の判断を示したが、さらに加えて「任意性の要件は、明確に認められることが必要である」「債務者が制限超過利息を自己の自由な意思によって支払ったか否かは、金銭消費貸借証書や貸付契約説明文の文言、契約締結及び督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容などの具体的事情に基づき、総合的に判断されるべきである」とし、法43条1項の適用要件を、同項の規定の趣旨から、支払の任意性の認定には広範な諸事情を総合的に勘案すべきであるとし、また法21条1項(取立行為の禁止)に規定された行為と支払いの任意性についても言及し、「法21条1項に規定された行為は、貸金業者として最低限度行ってはならない態様の取立行為を罰則により禁止したものであって、貸金業者が同項に違反していないからといって、それだけで直ちに債務者がした制限超過部分の支払の任意性が認められるものではない」としている。
⑤ 日掛金融と法43条1項の適用の問題である。
日掛金融とは日賦貸金業者のことをいい、日賦貸金業者とは、貸金業の規制等に関する法律2条2項に規定する貸金業者であって、
①主として物品販売業、物品製造業、サービス業を営む者で、常時使用する従業員の数が5人以下の小規模のものを貸付の相手方とし、
②返済期間が100日以上であり、
③返済金を返済期間の100分の50以上の日数にわたり、かつ、貸付けの相手方の営業所または住所において貸金業者が自ら集金する方法により取り立てる、業務の方法による貸金業のみを行うものをいう(出資法改正附則9項)。
日賦貸金業者の営業主体が一般には零細であり、また業態からいって取立行為に労力を要することから、高金利による処罰金利を一般の29.2%から54.75%に読み替える特例が設けられている(同項)。
この問題につきこの判決は、
a. 17条書面および18条書面の交付の要件はその目的が後日の紛争防止をすることにあると解されるので、貸金業法17条1項および18条1項所定の事項の記載内容の解釈は、書面自体によって明確かつ正確であるべきで、正確でないときや明確でないときにも、同法43条1項の規定の適用要件を欠く。
b. 本件借用書の「契約手渡し金額」の記載は実際に手渡された金額自体ではないから、17条書面が交付されたとはいえない。
c. 8条書面の記載に誤りがあった場合は法18条の要件を充たさない。
d. 約定返済期間の途中で、借換えをして返済期間が100日未満となった場合は出資法改正附則9項所定の要件を充たさない、と判示した。
さらに上記判決に付加し、
a. 契約書面には集金休日の記載がないのに、実際の貸付では集金休日が設けられたものについては正確な17条書面が交付されたことにはならない、
b. 17条書面に「その他取引のなさない習慣のある休日」と記載されている場合、その記載内容は正確、明確ではない、
c. 包括的担保設定以降の書面すべてに担保の具体的内容の記載が必要、
d. 取立日数が全日数の100分の70未満(改正前、現行は100分の50)となった場合は出資法附則9項所定の要件を充たさない、と判示して法43条1頃の適用を退けた。
以上が最近の法43条1項の適用要件に関する最高裁判所の判例であるが、これら一連の判例により「みなし弁済」規定の適用は事実上不可能となったと断言してもよいであろう。